訪問看護師としてキャリアを積んできたMさん。

 30代半ばで再婚後、子どもを持ちたいと願い37歳の時に妊活のため近医に通院し始める。診てもらえば普通に妊娠できるだろうとの想いがあったが、その気持ちとは裏腹になかなか授からない日々が2年間続く。

 

 そんな中、不妊治療関連のとある講演会に赴き、“この先生の下でなら納得した治療を受けられそう”だと思いその医師のいる専門のクリニックへ転院を決意。不妊治療に関して何か夫婦で決めて臨んでいたのかとの問いには、「本当に妊娠できるって信じてたから、何歳までとか、何回までとか、何も決めずに治療をしてたな。」とMさん。その病院では、やろうと思った治療にとことん取り組んでいくものの、そのランダムな不妊治療のスケジュールと仕事との両立に悩むことも。上司と相談し、3か月お休みをもらって治療に集中しては、仕事に復帰するということもあったという。「上司がとても理解のある人で、本当に良かった。急に休みをもらうのは難しいし、まとまった休みをもらって治療できたのは有難かった。けど、やっぱりダメだった翌日に仕事の時もあって、なかなか辛かったな。」と振り返る。

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 仕事では、主に医療的・専門的なケアの必要な子どもたちに接することが多い日々。子どもを授からない苦しい日々でも、もともと子ども好きでもあり、子どもたちを見ることは全く苦ではなかったという。しかし、「妊婦さんを目にするのは本当に辛かった。」「治療をしていて一番嫌だったのは、人の幸せを喜べなくなった時。」と、治療中の苦い想いも振り返る。本来なら笑顔で喜び合える瞬間も、苦悩に耐える時間になっている自分に気付き、それがとても嫌だったと。病院の待合で涙することもあったというが、「そんな時でもあまり誰にも話す方じゃなくて。話すのは夫だけだったかな。」と語る。

 

 治療が長期になる中、「もうこの先生に診てもらって出来ないなら、無理なのかもしれない」と信頼できる先生に出会えていたからこそ、そのように腑に落ちた部分もあるというMさん。今、不妊治療を振り返って思うこととして、「子どもは出来なかったけれど、治療をしたことで夫婦のコミュニケーションがより深く密になれるようになったのは良かったこと。」という。

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 経験者として、今不妊に悩んでいる方へのメッセージを送るとしたら?の問いには、「自分の納得が得られるまで、やれると思うことは全部やって欲しい!」。そして、「子どもを“産む”ことだけじゃなく、“育てる”ことにも目を向けてみて欲しい」と。

 

Mさん夫婦は約4年間の不妊治療を終え、その後は仕事に邁進する日々を送る。

 

 それから2年経った頃、「子どもが好きだなぁ。子育てしてみたいな。」という夫からの言葉。「血がつながってなくてもいい?」のMさんの問いに、「全然良いよ!」と答える夫。この決断からの行動はとても早く、夫婦で里親について調べ始めて約9か月。環境を整えるために引っ越しも行い自治体での里親研修を受け、2020年11月には正式に里親登録される。そして待機期間1ヶ月の12月に、3歳の男の子を委託。

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 夫婦の意向がそのタイミングで一致したことにMさん自身も驚く。不妊治療を終えた後も、里親になりたいとは思っていなかったというMさん。「不妊治療後は疲労感も強かったし、そこまで考える余裕もなかった気がする」という。しかし、夫の想いを聞く中で「色んな背景の子どもたちとたくさん関わってきた自分なら、子どもたちの特徴も見極めながら育てていくことも出来るんじゃないか?何より子どもたちは愛情や普通の家庭環境が必要だし、それを夫と一緒に与えたい。」と、社会的養護下の子どもたちを育てることについて、とても前向きに意欲的に考えるようになっていったという。

 

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 委託を受けて10か月が経つ今想うことは、

「里親になることって、社会全体にとって本当に良い事だと思う。ALL winじゃないかな。子どもだけじゃなくて、子どもを育てられない実親さんにとっても、そして子どもを育てたいって思う大人にとっても。でもまだまだ里親のことってネットで調べても出てこないし、直接足を踏み入れないと分からない世界。だからこそ、里親をもっと身近に感じてもらえるように発信していきたいとも思ってるよ。

 今は子どもとも上手く関係性が取れてきてるし、保育園にも通うように。そして自分も仕事を再開できた。この約1年で色んな段階があったけど、今はめちゃくちゃ楽しいし、里親になって良かったと思うな。息子が来てくれたお陰で、より一層夫との関係も良くなったと思うし。家族としての余裕も出てきたから、緊急保護とかでも全然受け入れたいなと思ってるよ。」と話すMさん。

 

 これまでの経験と夫婦の想いが合致した里親というかたち。現在も子どもとの関わりをより良いものにするために、コミュニケーションの取り方など学びを深める取り組みをされるMさん!これから多くの方に、Mさんの想いが伝わりますように!

 

 

♢インタビューを終えて♢

Mさん、この度は貴重なお話を聞かせて頂き本当にありがとうございました!!

里親さんから実際の声を聞かせて頂くことで、社会的養護下の子どもたちの現状、人と人とのつながりの温かさ、そして里親になることが自分の想像よりも難しいことではないことなそ、多くのことに気付かされ、学びを得ることが出来ました。また、ご夫婦の気持ちがぴったり合った瞬間のお話、とっても印象的でした。男の子のこれからの成長も楽しみです!

これからのMさんの活躍もぜひ追わせてください!

この度は本当にありがとうございました! 

BY つながろうFUNIN 辻