結婚する前から子宮内膜症と診断され、チョコレート嚢胞の治療もしていたSさん。

子どもが早く欲しいと思っていたため、33歳で結婚した後、すぐに不妊専門のクリニックへ。

 

 今想うと、“夫はその当時から自分ほど子どもを望んではいなかったのかもしれない“けれど、妊活のための検査は協力的で一緒にクリニックへ。Sさん自身には問題はなかったものの、夫の結果は良好とは言えず、それに対して夫自身がとても憤慨し受けとめられない様子だった。その夫の反応を見るとそれ以上治療を進めることも出来ないまま1年が経過。

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 そんな夫にも協力してもらいながらなんとか治療を進め、顕微授精の結果一回目で陽性反応が出る。通院先のクリニックからは心拍が見えた時点で卒院と言われ、母子手帳も早々にもらい喜んでいた妊娠7週のある晩。

 突然の腹痛と出血があり救急搬送。流産だと言われた時にはこれまでで一番の挫折感、絶望感を感じ一晩中眠る事は出来なかったという。

 

夫は転勤も多く、Sさんはその度に不妊専門のクリニックを探し、夫の様子を見ながら治療のタイミングを図り、妊活が上手くいかない時間が続くと仕事を始めて自分自身の時間も作ってきた。

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 関東から瀬戸内地方へ転勤した際は、まだまだ流産した時の想いは未消化のままではあったが、夫婦ともに仕事も好きで、それに打ち込む中での妊活を続けた。そんな時、妊活友達からの妊娠報告を聞き、Sさんは自分のある気持ちに気付く。「あれ?なんかもっと悔しさとか色んな気持ちが疼くかと思ったけど、意外と大丈夫だったな。子どもは欲しい気持ちはあるけど、そこまで気持ちを駆り立てずにもう少し頑張ってみよう。」

そう思っていたSさんだったが、不妊治療について夫とすれ違うことが多くなる日々。

そんな時に届いた関東での仕事のチャンス。Sさん自身、とことんやってみたいという強い想いもあり、同時期に山陰地方に転勤になった夫とは別居しながら暮らすことに。

 妊活から目を背けたかった訳ではないけれど、“夫がその気じゃない中で、自分が引っ張らないと妊活が進められないのはしんどかった”と語るSさん。夫から「ごめんね。」「申し訳ない。」と言われる度に、「謝る必要も申し訳なく思う必要もない、顕微授精出来る手立てがあるなら、全然良いじゃん。」と思うものの、治療を一人ですることも出来ず、また夫からもそれ以上妊活に対しての想いを聞くことも出来ない日々。

 

“子どもを産めなくても、育てることはどうだろう?”との想いもあったSさんは夫婦で養子縁組についても学んでいく。その中で「良いな」「ちょっと違うな」と二人が別々の想いを抱いたことで、Sさんの中にふとある気持ちが芽生える。「子どもに捉われない、違う人生を考えなきゃいけないのかな。」

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 Sさんは関東で仕事に精を出すも体を酷使し、二年間頑張った末、ついに倒れてしまう。

そんなとき「戻ってくれば良いんじゃない?」という夫からの一言は、夫婦の絆を深める大きなきっかけに。その言葉のお陰で「私はこの人と一緒に居ても良いな」と思えたと言うSさん。

 

 

今振り返ると、“仕事のない土地で妊活一本になるのは怖かったし、これで妊娠しなかったら、夫を恨んだり、夫のせいにしていたかもしれない“そう思うと、やっぱり自分のやりたいことをとことん出来た関東に行って良かったと思う。あの時があるから、「一人のしんどさや、一人でも自分のことを分かってくれる人がいることの心強さを心底感じたし、子どもより夫が大事だな、っていう気持ちになれたと思います。」と語るSさん。

 

その後、再度夫の転勤もあり、2人で新たな場所で暮らすSさん夫婦。最後にもう一度しっかり“妊活”に向き合っておこうと、“妊活をやめる”ための最後の治療にチャレンジをしたことも。そうすることで、気持ち的にも踏ん切りがつき、“これからは二人で生きていこう”という思いを抱けたという。

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妊活をしている時は“子ども”というものが自分の核にあり、子どものいない人生への恐怖や不安も大きかった。それでも、長い妊活経験の中で夫の人柄や夫との関係、自分の人生を見つめることができ、今は夫婦のこれからの人生にワクワクや笑顔の溢れるSさんなのでした。

 

 

 

♢インタビューを終えて♢

Sさん、この度は貴重なお話を教えて頂きありがとうございました。不妊の要因が自分にあることを受け入れることは、男性にとってもやはりとても難しいのだなぁと感じました。妊活を通して、お互いに成長できること、大切な存在だと気付けることはなかなか容易なことではないと思います。これからも人生のパートナーとしてぜひ素敵な時間を作っていってくださいね!本当にありがとうございました。